2020年6月19日

楽曲解説 『羅生門』 第1話 - 前身

作曲開始2005年
Key = B メジャー


アルバム『陰陽師』の第1曲目。
元々このアルバムは、オープニングSEから始めることを想定していたので、短めのインスト系の楽曲として作り始めた。歌は入れずに、前半にギターリフとラップ、そして、後半に未来的なイメージの効果音が鳴り響き、そのまま第2曲目に繋がる、といった構成を考えていた。サビは勿論のこと、AメロもBメロも、とにかくメロディーの要素は入れず、純粋なオープニングSE曲にするつもりだった。
ドラムやベースの音色は、機械的で無機質な印象のものを選んで打ち込みを開始した。やがてインダストリアルな世界観が形成されてゆき、「これぞまさにSE曲!」とその時点では満足していた。

ところがだ……
「SE曲にする!」という意識が強過ぎたのか、改めて後日、シーケンサデータを冷静に聴き返すと、あまりにも度を超えてけばけばしいサウンドになっている事に気付いた。ちっぴからも同様の感想があった。
特にベースの音色が派手で、かつチープでもあり、先に述べたような「機械的で無機質」なイメージ戦略が却って仇となっていた。つまり、せっかくの機械感が良い効果を出さずに、単に派手でありきたりな方向に行ってしまっていたのだ。

一般的に「無機質な音」といえば、「控え目でシンプル」、「使い勝手が良さそう」といったイメージが浮かぶかも知れないが、常にそうとは限らない。ここが音楽の難しさでもある。無機質なサウンドは諸刃の剣。程良い未来感を演出してくれる場合もあれば、単なる悪目立ちで終わる場合もある。今回はまさに後者であった。

結果、打ち込んだ直後は「サイバーで素敵」と感じられていた音が、ことごとくコレは違う…と認識され始めた。そこで急遽、ドラムやベースの音色を主張の少ないソフトなものに差し替えることにした。
なるほど!これだと安定した音世界が成立している。特有の下品さが無く、ポップスらしく聴きどころある仕上がりになっている。
何と言っても、聴き易さが倍増している!
ウム!これなら良い感じだ、これで行こう。
…と思った。
が、しかし!
これではもはや、SE曲っぽさがすっかり消失しまっているではないか。アルバムのオープニングを景気付けるための短い曲、という雰囲気ではない。それこそ何らかのメロディー部分が無いと盛り上がりそうもない。
さてどうするか……。
(つづく)

次回更新予定日は 7月24日(金)