静かで落ち着いた中にも、明るさや刺激、非日常さが感じられる「歌入りのアンビエント」
そんなコンセプトで制作した本曲であるが、その実現のために施した工夫をいくつかご紹介しよう。
まずは定期的に鳴る、高音の鈴のような金属音だ。ディレイ効果を付けて不思議な輝きを演出した。
ギターも音数の少ない単音弾きを中心とし、浮遊感を重視している。
これらの幻想的なサウンドに掛け合わせるのがノイジーなドラムパートである。今回のドラムはなるべくラウドな音源を選び、時間によって音色を変化させている。ドラムだけを集中的に聴いてみると、武骨でインダストリアルな響きに気付いていただけるだろう。
アンビエントなのに刺激とビート感が保たれるという新感覚を目指したのだ。
またメロディーは、普通の歌もののメロディーラインというよりは、楽器で演奏するタイプのメロディーを意識して作った。ポップでありながら、音程変化は機械的である。おそらくオルゴールのような音色の楽器で演奏してもよく合うと思う。
そして歌詞であるが、実は元々この曲も普通に日本語で作っていた。だがそれを廃止し、ほぼ全域をαスキャットとした。唯一残した日本語も、「ゆっくりと/まどろみに/おちてゆく」といった日常会話ではあまり登場しないような言葉を選んでいる。
このような意図で構成された今回の歌詞にはメッセージ性はなく、共感を呼ぶことはまずないだろう。だがそれで良い。やはり人は言葉が具体的であるほど、描くイメージがその意味に引っ張られてしまう。日常性を排すことで、夢の中での出来事のように感じられるのだ。
このようにして作られた『走馬灯』、皆さんを幻想的な世界へと導くお手伝いができているのではなかろうか。
なお本曲には「心地好いまどろみに導くおまじない」が込められているが、実際、眠気を誘う効果があると感じている。学園催の楽曲は、その8割以上が朝のスタートダッシュ、気合一発!という系統が多い中、この曲は例外である。乗り物の運転時など集中を要する場面での再生は念の為に控えて、できれば就寝時などリラックスしたい時にお聴き頂きたい一曲である。
つづく
2022年2月23日
楽曲解説 『走馬灯』 第2話 - 夢想
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