2022年1月1日

部活動、始まります!

こちらは学園催の部活動「音楽研究部」の発表の場です。
歌曲の詳しい解説や、中宮貞子の音楽論を掲載していきます。音楽研究部内には、器楽班、映像鑑賞班などがあり、各班の研究成果も発表されます。

本学園のカリキュラムと共に、こちらの部活動もご一緒に楽しみましょう😄

2020年3月20日

楽曲解説 『陰陽師』 第3話

前回は、創作上の陰陽師と実際の陰陽師の在り方についてお話した。今となっては確実なことは言えないが、近からず遠からずというところだろう。

歌曲『陰陽師』を作るにあたっては、このような「華美ではないが、実は世を支配する黒幕」という世界観をモデルに作曲した。そしてD♭マイナーという、通常のポップスではあまり使われないキーで奏されている。ちなみにハードロックやメタルでは、弦楽器のチューニングを半音下げにする場合が多いので、聞こえ上はD♭マイナーになり、それほど珍しくはないキーではある。しかし普通のポップスでは、特段の理由でもない限り、わざわざこのような微妙なキーで演ることは少ない。ともかく、このD♭マイナーのお蔭で独特の暗さが出ていると思う。

また当時は、この歌曲を主体としたアルバムを制作する事は全く想定していなかった。アルバムのタイトル曲にしては、少々地味で控え目な雰囲気にも感じていた。現に、アルバム『陰陽師』には、派手でインパクトの強い歌曲は沢山ある。むしろそれらの方がタイトル曲と言っても良いほどだ。だが、先述の「黒幕的」な世界観に従えば、この『陰陽師』がタイトル曲で良いのかも知れないと考えた。
また、一つの曲にかなりの年数をかけてじっくり作り込むスタイルの私からすれば、この歌曲は作曲にかけた年数が短い。2年と数カ月で完成している。実に稀なケースである。だが、その割には底知れぬ暗黒の雰囲気が漂い、古(いにしえ)の深さが表れているようにも思える。
ともすれば、平安を生きた陰陽師から送られて来た霊験の賜物だろうか…。
(完)
次回更新予定日は 4月10日(金)

2020年2月28日

楽曲解説 『陰陽師』 第2話

ところで陰陽師と言えば、皆さんはどのような存在だとお考えであろうか?
現代では小説や映画などに登場し、容姿端麗で呪術や占術を駆使する、神秘的かつアイドルのような存在として描かれるケースが多い。しかし実際の陰陽師は、その限りではなかったようだ。やはり現代の作品においては美化され神格化されている面があるだろう。確かにその方が浪漫があり作品を楽しめるので、それはそれで素晴らしいのだが、今日は、陰陽師への違った視点、意外な一面に触れるのも良いのではなかろうか。

陰陽師を現代の職業に置き換えると、何に相当するだろう。まずは気象予報士が近いところではないだろうか。あと、政治家の側近のような仕事もしていたようだ。つまり、占術等を駆使し、天候を予測したり、政治経済の情勢を読んだりしていたのだ。いずれにしても非常に重要な役職ではあるが、映画等で描かれているような華麗さはなく、ごく堅実な職業であったと思われる。スター性や神秘性とは無縁の、地味な存在ともいえる。安倍晴明の肖像画を見ても分かる通り、華美な点は一切無く、ごく普通の真面目そうな男性だ。

しかし、私にはその方が魅力的に感じるのだ。なぜなら、まだコンピュータもなく科学技術も全然発達してなかった時代に、一見地味な人達が、天候を予測したり、世の情勢を捉えていたのである。彼らの言葉ひとつで国が動くのだ。途轍もない黒幕のような威力を感じずにはいられない。ハリウッド映画でもよくあるように、一見冴えない地味な男性が、実は世界を牛耳る黒幕だった、というパターンの意外性やギャップが好きである。実際の陰陽師もそのような存在だったように思えるのだ。

私が「陰陽師」というタイトルで歌曲を作る事になった時、初めは魑魅魍魎に対し呪術で闘う、いわゆる典型的な華々しい陰陽師の姿をテーマにして、アップテンポで、軽快かつ雅(みやび)な雰囲気のものにするという案もあった。
だが、やはり上述したように、自分が本来陰陽師に対して持っているイメージを重視し、黒幕的で、奥底から来る威力が表現できるような、ミディアムテンポで暗い歌曲に作り上げる道を選択した。

[第3話に続く]
再来週の更新はお休み。
次回更新予定日は 3月20日(金)春分の日

2020年2月14日

楽曲解説 『陰陽師』 第1話

作曲開始 2004年
Key=D♭マイナー

「陰陽師」という言葉をみれば通常は、平安時代などの和風で雅な印象を持つだろう。しかし、なぜか私には、また違ったイメージが浮かぶことがある。デジタル空間的、あるいはレーザー光線のようなものというか。おそらく「陰陽」という字面が「光と影」をも連想することから、その明暗のコントラストにより、電子的というか、未来的というか、そういった想像がかき立てられるのだと思う。
例えば暗闇の中、点いたり消えたりを繰り返す、切れかけの電灯のように、定期的或いは突発的な発光のイメージがよぎるのである。
この曲では、まさにそのような情景をもとに制作を進めていった。明滅する光の様子は、エレクトリックピアノのリフで表現されている。

当初の音楽的な計画としては、和風な要素を敢えて入れない予定でいた。理由の一つとしては、陰陽師という言葉からは、先述の通り私には電子的な光景が浮かぶからである。しかし、いま一度考えてみれば、『陰陽師』というタイトルにも関わらず和風要素が一切ない曲というのも、偏り過ぎているかもしれない。しかも自分自身、制作を進めて行く中で、気付けば頭の中ではある程度の和風音階が次第に鳴って来ているではないか!
そういうこともあって、ここは素直にインスピレーションに従って作る方が良さそうだ、と思い直した。

[第2話に続く]
次回更新予定日は 2月28日(金)

2020年1月31日

楽曲解説 『清水寺』 第3話

第2話は、楽曲制作に関してかなり踏み込んだ内容になった。未知の世界に迷い込んだように感じた方もいらっしゃるかと思う。だが、ここは学園催。そう、学校なのである。部活動ではあるが、文化部ということで、頭の体操と捉えていただければ幸いである。

さて、清水寺の制作に話を戻そう。

教科書的なテクノの作り方に則り、ベースやドラムのハイハットは裏打ちを強調するフレーズにするなどして、打ち込みは完了した。だが、その打ち込んだ先とは、YAMAHAのシーケンサQY300である。無論私はこのヤマハQY300が大好きである。最高のマシンだと確信している。現在でも、私の音楽制作に於ける中心的なツールとして活用している。とても操作がし易く、機能性は世界一だと思う。だが、かなり昔に生産・サポートは終了しており、今となっては、知る人もあまりいない骨董品的なマシンとなってしまった。音色に関しても、はっきり言ってテクノとは程遠い。快適な操作性は裏腹に、サウンドに難ありなので、工夫が必要となる。

まず、伴奏楽器の音色だが、このシーケンサに搭載されている中で数少ない電子楽器音である square wave(矩形波)やsaw wave(鋸歯状波)などを選択 (ただし公開版では、サウンドが単一的になるのを避けるために、他の音色になっている部分もある。) そこにエフェクトをかけることで、テクノらしさが出るようにした。ドラムは、往年のテクノのドラム音源の代表とも言えるTR-909のサンプリング音を使用。
なお、一般的なテクノやトランスでは、「アルペジエータ」と呼ばれる、自動的に分散和音を演奏してくれる機能がよく用いられるものだが、残念ながらQY300にはそのような機能は付いていない。仕方なく、手作業で各和音から成るピコピコ的なフレーズを追加で打ち込みしていった。

ところで、この曲は1分43秒の所からCメロになるが、ここだけ敢えてバンド風のアレンジになっている。ドラムのスネアもバスドラムもバンド系の音色。ギターもクリーントーンで普通のコードストロークプレイ。なぜここだけアレンジを切り替えたかというと、このように相反するジャンルの対比を用いることで、テクノの部分を際立たせ、よりテクノサウンドに聴こえる仕上がりになると考えたからだ。この様式は現在も学園催の音楽形態の1つとなっており、他にも河原町、新学期、阿僧祇、修行僧といった歌曲でもこの様式で制作されている。今後もこのような形態の歌曲は登場させる予定である。

またこの清水寺では中華風の曲調になっていることから、ストリングス系の音色もリバーブを深くかけるなどして、雲南省や四川省などの壮大で霊験あらたかな雰囲気を醸し出すようにした。

このように試行錯誤しながら、ロックバンドの活動の傍ら数年かけて、自分好みのテクノサウンドを作り上げるという目標は達成できたと思う。しかし、完成したものが「学園催の曲」として日の目を見るのは、また数年先の話である。(完)


次回更新予定日は2月14日(金)

2020年1月17日

楽曲解説 『清水寺』 第2話

さて第1話は如何だっただろうか?結構な昔話も含まれていた。非常にマニアックだと感じた方々もいらっしゃるだろう。今後、他の歌曲も順次解説していくわけであるが、まあしかし、毎回このようなマニアックなものにはならないつもりだ。曲によっては、面白エピソードを交えたり、気楽に読めるものも掲載していくので、今後ともご愛読頂きたい。


それでは、「清水寺」制作の続きである。

楽曲のコンセプトは決定したが、実際の作曲手順は、以下のようなものであった。

まず、ヴォイスパーカッションなどで、ドラムやベース等のフレーズをラジカセにメモ録音する。シンセのパートも声で録音した。ラジカセを数台用意して、多重録音によって出来る限りの音数を記録した。メモ録フレーズがある程度まとまり、楽曲としての構成が固まってくれば、ヤマハのシーケンサ「QY300」に入力していく。

これはもちろん、非常に手間の掛かる作業工程である。メモ録などせずに、考え付いたフレーズを直接QY300に打ち込めば良いのに、と思われるかもしれない。その上、ラジカセが登場するなど、現代から考えれば想像を絶する手法だろう。

だが私は、旋律やフレーズが頭に浮かんだ、まさにその瞬間の印象や威力・鮮度を逃さぬよう、即時に記録することにこだわっている。後でその録音を聴きながら、頭の中で組立・吟味し、「よし!コレだ!」と確信してから、初めてシーケンサで打ち込み、と言う手順で進めることが多い。考え付いたフレーズは、まず耳で実際に聞ける形にしたり、楽譜に書いたりして、そのフレーズが心に納まったと感じてから、シーケンサに入力する。
私は今もこのやり方で楽曲制作を行っている。


[第3話に続く]
次回更新予定日は1月31日(金)

2020年1月3日

楽曲解説 『清水寺』 第1話

作曲開始 1996年
Key = F#マイナー


これから数回に渡り、歌曲「清水寺」が出来た経緯についてお話しする。かなり昔の事にも言及するので、令和の時代からすれば、想像がつかないようなことも多いかもしれない。そこは温故知新・または未知への遭遇といった気持ちでご一読いただければ幸いである。

清水寺の作曲を開始した頃、1996年~98年の音楽シーンでは、ヒット曲と並行する形で、日本でもテクノやトランス等のジャンルが盛んになっていた。様々なダンス系のオムニバスアルバムも多くリリースされ、華やかに時代を彩った。私もその盛り上がり具合は好きではあったが、単に流行りに乗っただけの作品も多かった。それらはダンスフロア等で流れる分には最適だったかもしれないが、私は、じっくりと聴き込めるようなダンス系サウンドを求めていた。

しかし、探せど見付からない。
無いものは自分で作るしかない。
そこで、「自室で集中して世界観に浸れる」ことに特化したダンス楽曲の制作を始めることとなった。

その当時、私は普通の4人組ロックバンドで活動していた。
「清水寺」はお聴きの通り、打込系・四つ打ちタイプなので当然、ロックバンドで演奏出来るタイプのものでは無かった。せっかく作ってもそのバンドでは演奏されることはない。しかし、テクノを作りたい!と言う情熱は抑えられず、今思えば、まだテクノを作れるような環境が整っていない状況から作曲を開始した。
コンセプトとしては、通常は西洋的な要素を持つダンス曲に、東洋風の旋律を基礎とし、歌詞も漢字の音を主体としたものを取り入れると面白いのではなかろうか、と思い立ち、そこからスタートした。


[第2話につづく]
 次回更新予定日は、2020年1月17日(金)