さて第1話は如何だっただろうか?結構な昔話も含まれていた。非常にマニアックだと感じた方々もいらっしゃるだろう。今後、他の歌曲も順次解説していくわけであるが、まあしかし、毎回このようなマニアックなものにはならないつもりだ。曲によっては、面白エピソードを交えたり、気楽に読めるものも掲載していくので、今後ともご愛読頂きたい。
それでは、「清水寺」制作の続きである。
楽曲のコンセプトは決定したが、実際の作曲手順は、以下のようなものであった。
まず、ヴォイスパーカッションなどで、ドラムやベース等のフレーズをラジカセにメモ録音する。シンセのパートも声で録音した。ラジカセを数台用意して、多重録音によって出来る限りの音数を記録した。メモ録フレーズがある程度まとまり、楽曲としての構成が固まってくれば、ヤマハのシーケンサ「QY300」に入力していく。
これはもちろん、非常に手間の掛かる作業工程である。メモ録などせずに、考え付いたフレーズを直接QY300に打ち込めば良いのに、と思われるかもしれない。その上、ラジカセが登場するなど、現代から考えれば想像を絶する手法だろう。
だが私は、旋律やフレーズが頭に浮かんだ、まさにその瞬間の印象や威力・鮮度を逃さぬよう、即時に記録することにこだわっている。後でその録音を聴きながら、頭の中で組立・吟味し、「よし!コレだ!」と確信してから、初めてシーケンサで打ち込み、と言う手順で進めることが多い。考え付いたフレーズは、まず耳で実際に聞ける形にしたり、楽譜に書いたりして、そのフレーズが心に納まったと感じてから、シーケンサに入力する。
私は今もこのやり方で楽曲制作を行っている。
[第3話に続く]
次回更新予定日は1月31日(金)