2021年1月29日

楽曲解説 『新学期』 第2話 - 構成

第1話で述べたように、新学期とは私にとって、複雑な思いを抱かせるものであり、また、そこからの気付きも得られるものだった。
成長・進化する為には、面倒な壁を乗り越える過程が必要だ。
時には不慣れな事に挑戦すれば、眠っていた能力が活性化し、自らを向上させてゆく。

歌曲『新学期』はこういった思いを込め、本学園の作品の中でも特に多様な要素から構成されている。今回は、活発に新陳代謝する細胞のようにめまぐるしく変化していく曲の構成について少々解説したい。


本曲では様々なジャンルを取り入れることにより、「環境の変化」を表現している。テクノ、ハードロック、アンビエント、そしてポップサウンドと、概ね四種類のサウンドが一曲の中で奏でられる。
テクノとロックを融合させるスタイルは、『修行僧』や『河原町』等でも採用している、いわば学園催の定型だが、今回はそこにアンビエントが加わり、コントラストをより際立たせている。

イントロ前半はテクノサウンドから始まり、突如ハードロック調に取って変わる。歌が始まるAメロではテクノサウンドに戻り、Bメロではまたハードロック。これは環境や心境が移り変わる様子を表現している。
ハードロックの箇所で鳴っているギターは、敢えてアンプ録りにした。フェンダーのかなり旧型のアンプを使い、「生感」というか、古風な、空気感のある音作りをしている。今回の題材である小学校生活に思いを馳せ、あの時代の純粋な気持ちに立ち返りたいという意図がある。

間奏では一転して、不思議な異空間に迷い込んだような世界が展開する。
一般に、賑やかな曲調の間奏といえば、華やかなギターソロ!が定番であるが、今回は敢えてアンビエントを採用した。スピード感を一気に落としたリズムの上に、静寂でホラーなひと時が展開する。この緩やかなリズムが象徴しているのは、校庭でぽつんと一人、ブランコに揺られている児童だ。チャイムが鳴り、「起立、礼…」の号令がかかる。もう授業が始まる時間だ。なのに児童はまだ、校庭のブランコで遊んでいる。変化する環境になかなか馴染めない疎外感や、気持ちの浮き沈みから来る心象風景でもある。

サビと間奏後のCメロは、一般的なポップサウンドだ。特にCメロは、アンビエントな間奏から再度、賑やかなバンドサウンドに戻る前の助走としての役割がある。
そしてこれらのパートでは、学園催としては異例のアコースティックギターも登場する。実は私は、本学園の歌曲に於いて、アコースティックギターの演奏は一切しないでおこうと考えていたのだ。 では、なぜ今回採用するに至ったのか?
次回はその経緯をお伝えする所存である。

(つづく)

次回更新予定日は 2021年2月26日(金)