作曲/編曲/作詞:中宮貞子女帝
作曲開始:2007年
楽曲発表:2009年
Key=Eメジャー
今回解説する『修行僧』は、私にとってかなり意味深い曲である。私個人としては、学園催の曲の中での再生回数は最も多いだろう。
何故それほどまでに思い入れがあるのか?
学園催の世界観の一つに、「相反する世界の融合」がある。これを具現化したものが、「ダーク&ヘヴィー vs キュート」という、両極の要素を包括したテクノポップだ。
この形態を採用している学園催の曲は、いくつか存在する。本曲をはじめとして、自閉症・清水寺・河原町・新学期などがそれである。いずれもハードロックに、ダンスやトランス等の要素を組み合わせたテクノポップで、基本的な構成は共通している。
どの曲も気に入っているが、特に『修行僧』では、そのメリハリが極度に強化されている。特筆すべきは、徹底的に攻め込むラップとヘヴィなギターリフの勢いで、ポップな部分とのコントラストをより際立たせている。
実はこれは、私が長年実現したかった音楽形態である。別々のジャンルの音楽を融合しようという構想は、バンド活動を始めた頃から既に持っていた。
私は昔から、ギャップやコントラストのあるものに心惹かれてきた。「飴と鞭」「陰と陽」など、相反する性質のものが同居しているという感覚が好きだったのだ。そこで、可愛らしいポップサウンドの直後に畳み掛けるように襲って来るヘヴィーでラウドなロックサウンド…これが成立したら相当愉快だろうな、と想いを馳せ、そういう曲を時々作っていた。
尤も当時は普通のロックバンドで、楽器と言えばギター・ベース・ドラム以外は考えられないというような環境で活動していたので、テクノ系の楽曲を演奏することはなかった。それでも、いつかは演ろうという思いで作曲だけは続けてきたのだった。
このようにギャップ好きだった私だが、そのこだわりは本学園が開校されてから更に強固になった。
というのも、「学校」とはコントラストの極致ではないかと感じているからだ。
学校は、生徒達が集まり「授業だ、休み時間だ、給食だ、部活動だ」という様子で賑やかな場所ではある。だが一旦皆が下校すると、その賑やかさが嘘であるかのように静まり返り、霊的なものが漂うかのような静寂が訪れる。なんとも強烈な陰と陽である。日中が賑やであればあるほど、夕方以降の静寂がより心霊的な雰囲気を感じさせる。
それが証拠に、いつの時代も学校には怪談や都市伝説的な話が付きまとっているものだ。霊を信じる信じないに関わらず、誰もが感じたであろうあの空気感。「陽」が強いほど「陰」の話も、よりスリルと深みが増す。
学校は最高に賑やかな場であり、最高に寂しい場でもあるのだ。同じ場所なのに、その様相は極端に変化する。まさに学校は、この陰陽を表す恰好且つ最高の舞台である。
そのような思いから、長年の構想が「ダーク+ キュート = 学園催テクノポップ」として、遂に実現したというわけだ。(つづく)
次回更新日は 9月24日(金)